「外見ではわからない」からこそ知ってほしい。高次脳機能障害の基礎知識

皆さんは「障害」と聞いたとき、どのような状態を思い浮かべますか? 車いすを利用されている方や、白杖を持っている方をイメージするかもしれません。

しかし、世の中には**「見た目には全く変わらないのに、日常生活や仕事で人知れず苦しんでいる」方々がいます。それが、今回解説する「高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)」**です。

医療・介護の現場に携わる立場から、ご家族や周囲の方にまず知っておいてほしいポイントをわかりやすくまとめました。


1. 高次脳機能障害ってなに?

一言でいうと、**「脳のケガによって、考える力(脳の機能)に支障が出た状態」**のことです。

  • 原因: 交通事故、脳卒中(脳梗塞や脳出血)など
  • 特徴: 脳のダメージにより、記憶・注意・感情のコントロールが難しくなる

最大の難しさは、**「一見すると元気そうに見える」**ことです。

麻痺などの身体的な後遺症がない場合、周囲からは「すっかり治ってよかったね」と言われることもあります。しかし、いざ生活に戻ると、以前とは違う「自分」や「家族」の姿に戸惑うケースが非常に多いのです。


2. 具体的な4つのサイン(主な症状)

専門用語を避け、日常生活でよく見られる変化を4つに整理しました。

症状の種類よくある困りごと
新しいことが覚えられないさっき聞いたことを忘れる、何度も同じ質問をする、約束を忘れる
集中力が続かないぼんやりしてミスが増える、複数のことを同時にできない
段取りが立てられない優先順位がわからない、計画通りに物事を進められない
感情を抑えられない急に怒り出す、泣き出す、あるいは極端にやる気がなくなる

3. なぜ「周囲の気づき」が重要なのか

この障害の本当の怖さは、本人も周囲も**「障害のせいだ」と気づかないまま、社会から孤立してしまうこと**にあります。

仕事でミスが続くと「やる気がない」「性格が変わった」と誤解され、解雇や退職に追い込まれたり、家庭内でのトラブルから離婚に至ったりするケースも少なくありません。

これらは本人の努力不足ではなく、**「脳のケガによる症状」**です。

「以前のあの人なら、こんなことはなかったはず」という違和感こそが、大切なサインになります。まずは障害であることを正しく理解し、適切な配慮を受けることが、解決への大きな第一歩です。


4. これからの希望:脳は「学習する臓器」です

「後遺症だからもう治らない」と悲観する必要はありません。

脳は学習する臓器です。**適切なリハビリや、メモを取るなどの「工夫(代償手段)」**を身につけることで、できることは確実に増えていきます。

現在は、行政の支援事業も充実しています。

  • 障害者手帳の活用
  • 福祉サービスの利用
  • 専門家による社会復帰のサポート

これらを活用しながら、その人らしい生活を再構築していく道が開かれています。


まとめ:もし「以前と違う」と感じたら

脳の病気やケガの後、「仕事がうまくいかない」「性格が変わった気がする」と少しでも感じたら、一人で抱え込まないでください。

まずは、病院のリハビリ科や、各都道府県にある**「高次脳機能障害支援センター」**などの相談窓口を頼ってみてください。

高次脳機能障害は、周囲の理解と適切なサポートがあれば、自分らしく生きていくことができる障害です。この記事が、あなたや大切な誰かの「これから」を考えるきっかけになれば幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました🙏